ダイバーシティ経営でV字回復の2代目社長

 

こんにちは。中田麻奈美です。

 

新潮45問題。かなり炎上していますね。
かくいう私も感情的に反応してしまいましたが、
少なくともLGBTと痴漢は全く別次元の話であって、同列に論じないでいただきたいものです。

 

LGBTを含め、発達障害など昔は病名がつかなかった疾患も認知が広まり、
ガンも闘病しながら働ける病気になってきた現在、
多様性を生かした経営に注目が集まっています。

今日は、ダイバーシティ経営で業績をV字回復させた2代目社長の事例を見てみます。

 

ダイバーシティ経営は会社の業績を向上させる

 

実は6月に長野県中小企業家同友会の会員になったのですが、
ちょうど先日障碍者問題委員会共催で松本・塩尻・木曽支部合同例会が開かれ、
神奈川県の有限会社川田製作所副社長 川田俊介さんに、
ダイバーシティ経営についてご報告いただきました。

 

なんと川田製作所は、23名の社員のうち、6名が障碍者、5名が外国人、6名が高齢者だというのです。
現役世代の日本人健常者は1/4ということになります。

 

お父様が創業した会社は、昔から1社依存度が高く、8割くらいあったそうです。
納入先の企業がヒット商品を出せば、その部品を作っていた川田製作所の仕事も増えます。
生産体制を増強して売り上げを拡大していましたが、
売れる商品は、部品調達や生産拠点が海外に流れてしまうパターンが多く、
あるときは売上高対前年比-70%、またある時は-80%といったとんでもない大激減を招きました。

今はそこからV字回復を成し遂げ、一社依存度も30%程度、お取引先も3倍に増えました。

 

その秘密はどこにあったのか、興味ありますよね。

 

ダイバーシティに追い込まれた2代目社長

川田さんご本人は、長男でもあり会社を継ぐ気で工学系の学部に進学されますが、
卒業後は十数年SEとして別の会社でご経験を積まれました。

家業が儲かっているときに社長交代の話が出て承諾しましたが、
残念ながらその後の売上急落のタイミングで就任することになりました。

転機が訪れたのは、廃業する同業者から仕事を引き継いだ時です。
同じ町工場仲間の仕事を同社で引き受けることになり、仕事が急増します。
ヒト・モノ・カネでいうところの「ヒト」が足りません。

川田さんの場合は、ダイバーシティを目指したわけではなく、
結果的に、ある意味仕方なくダイバーシティにならざるを得ませんでした。

 

先代のころから、知的障害や聴覚障害の方が2名働いていたこともあり、
初めて障碍者雇用に取り組む会社よりは心理的ハードルも低かったのだろうと思います。

 

もちろん、ネガティブな反応、ネガティブな事案はたくさん起こりました。
衝突や職場のストレスが増え、実際不良品も増えたそうです。
外国人同士のバトルや、障碍者に対する差別、ジェネレーションギャップ…

 

しかし同時に、ポジティブな変化も起きました。

 

良い雇用の場を作る

障碍者といっても、人によって障害の箇所も特性も様々です。
画一的な対応ではお互いに苦しくなってしまいます。

 

障碍者就労施設を営む方から伺ったお話では、
とくに精神障害の方は気分の波があるそうで、計画的に生産できないのです。
今日は誰が来るのか来ないのか、途中で帰っちゃうのか分からない。

別の事業所でも、15人のうち常に2~3人は誰かが休んでいると。

 

そこで川田さんは、個人個人の苦手なことを理解することに努めました。

A君は数字を読むことはできるけど、数を数えるのが苦手。
1日の製造数や不良数を不良の内容別に日報に記録しなければなりませんが、
とくに10より大きい数を数えるのが苦手だったんです。

試行錯誤の末、数えるべき項目一つ一つに対してカウンターを導入し、
不良が出たらカチッと押してもらうことにしました。

仕事が終わったらカウンターに表示された数字を書き写せばOK。
これで彼の仕事は格段に生産性が上がり、ミスもなくなりました。

 

面白いことに、それは健常者にとってもやりやすい方法で、
今は全員がカウンターを利用しているんだそうです。

障碍者がつまづくところは、きっと他の人も小さなストレスを感じるところ。
それを解消することで、会社全体の生産性が向上します。

 

また、逆に個人個人が得意なことも理解し、苦手を得意に変換するように仕事のやり方を変えていきます。

決まったことをきっちりやることが得意なBさんは、あいまいな指示が苦手でした。
「なるべく早く」「30~40枚」「適当に置く」といった指示ではうまく仕事ができません。

そこで上司や周りの人に協力してもらって、
「明日の午前中までに」「32枚」「この机の右端に置く」
超具体的な指示を出すようにしました。

こんなことすら、現場からは最初は不満も出ましたが、
実際やってみて慣れれば、指示を出す側もスッキリだそうです。

決まったことをきっちりやることが得意なBさんにとって、
毎日の色々な雑多な仕事を同時にこなすことも苦手でした。
優先順位を判断できないのです。

そこで、やるべき仕事を「お仕事カレンダー」に落とし込みました。
曜日・時間ごとに何をするのか、「電気ポットの電源を切る」といった細かいことまで!

これでBさんは決まったことをきっちりやる得意技をいかんなく発揮して
事務所になくてはならない人財に育っているそうです。

 

お仕事カレンダーを作るには、仕事の塊を小さなタスクに細分化する作業が必要になります。
作業手順の見直しにもつながり、他の社員にとってもプラスになるでしょう。

 

これはまだほんの一例です。

長くなったので続きは後日。
ダイバーシティが生み出す宝物のお話です。

 

 

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