今国会で決まるHACCP義務化、ウチはどうする?どうなる?

 

 

こんにちは。中田麻奈美です。

 

今日はある食品会社の社長と、JFS規格の概要についての研修に参加してきました。
お客様と共に学び、認識を合わせます。

…もちろん自腹です!(笑)

 

社長は前のめりで質疑応答でも積極的にご質問を投げかけていました。

当社も新規取引開始にあたって工場監査を受けることが多くなってきた。

その際、先方の営業も早く取引したいと希望してくださっているにもかかわらず、

当社の衛生管理レベルが低く、先方の品証から山ほど宿題を出される。

物理的に対応可能な部分は少しずつ取り組み始めているが、

問題はルール作り等のソフト面。

国のHACCP義務化の動きもあるが、いつ動き出せばいいのか。

当社の営業マンも「認証取得したら名刺にロゴを入れたり、お客様にアピールしてもいいのか?」と悩んでいるのだが…

 

食品業界ではない方にはなじみのない話かもしれませんね。

 

JFS規格は、平成28年に設立された、一般財団法人食品安全マネジメント協会(JFSM)が運営している、
食品安全のマネジメントシステムを構築する規格です。
ISOやFSSCとは異なり、日本発の食品安全管理規格になります。

まだ新しい規格なので認証取得企業も少なく、業界以外では耳慣れない規格かと思います。

食品安全の規格としては、ISO22000-2やFSSC22000のほうが有名ですね。

 

JFS規格は、他の規格と違って唯一ステップアップ方式の規格となっており、
JFS-Aが一般衛生管理を中心に、
JFS-BはHACCP対応、
JFS-CはFSSC22000 と整合するように設計されています。

 

なぜJFS規格ができたのか?

 

実は日本の食品衛生レベルは世界的に見て十分ではなく、
経験値ではOKなんだけど科学的根拠に基づいて管理されていない小規模事業者が多いのが現実です。

世界各国でHACCPが義務化される中、
日本では大企業で8割、中規模企業で3割、小規模企業で1割しかHACCPに対応していません。

東京オリンピッでのインバウンドや食品の輸出拡大を狙う政府としては、
世界基準であるHACCP対応を日本でも制度化(義務化)し、
将来にわたって国際競争力を維持・向上したいと考えているようです。

各国の食品安全規制は年々厳しくなってきており、
ほとんどがHACCPの概念を取り入れたシステムを義務化しています。
こうなると、HACCP対応は取引条件となってくるため、
国内でも輸出事業者は対応せざるをえなくなっています。

 

国内の取引先がISOやFSSCの認証取得を取引条件とする場合もあります。

 

しかし、ISOやFSSCは海外発であり原文は日本語ではありません。
日本には独特の生食文化や、味噌などの発酵食品もあり、
ISOやFSSCでは適用しにくい部分もありました。

そこで、JFS(JAPAN FOOD SAFETY)では、
日本食文化にも対応した、HACCPを取り入れた日本語の規格を作ったわけです。

まだ協会設立から2年と日が浅いため実績が少なく、
JFS-CがFSSC22000と同等だと正式に認められてはいませんが、
将来そうなるように働きかけているとのことでした。

 

今国会は連日「モリ」「カケ」「日報」「セクハラ」でもちきりですが、
予定では食品衛生法が一部改正になり、HACCPが制度化(義務化)されます。

 

フードチェーンに関わる全ての事業者が対象です。

 

規模のいかんにかかわらず、業種業態にかからわず、です。

まさに農園から食卓まで、すべての事業者がHACCPに対応しなければなりません。

 

とはいえ、HACCPの7原則12手順を完全実施する「基準A」の対応がむずかしい小規模事業者や、
製造と販売が同じ場所で行われる街のお菓子屋さん、飲食店などは、
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理が求められる「基準B」が適用されます。

 

HACCPとJFS規格の関係は? 基準A/BとJFS-A/Bは同じ??

今日伺った話では、「基準B」は飲食店や小規模なバックヤード等のイメージで、
小さくても食品工場であれば「基準A」になるとのことでした。

このへんは、本当に法案が成立してからでないと確かなことは言えませんが、
意外と「基準A」に入る事業者が多くなりそうな気配もあります。

この「基準A」に適合しているのがJFS-B規格ということになります。

JFS-A基準は、一般衛生管理を中心にHACCPを部分的に取り入れますが、
12手順のうち、「手順6:ハザード分析」は含まれません。

基準Bは、要求事項として「ハザード分析」が含まれるため、
JFS-Aでは足りない可能性があります。

AやらBやら紛らわしいですが。。

 

義務化されるのに、わざわざ民間認証を取得するべきか?

実は私は厚生労働省の担当者に電話して、HACCP義務化についてお聞きしたことがあります。

そのときは、
「義務化だから民間認証を取れという話ではない。
よって取得にお金がかかるものでもない。
自分たちがきちんとHACCPに対応していればそれでいい。」ということだったのです。

それでも、民間認証を取る意義は、「時間」を買うということです。

もし民間認証を取得していない場合、
今日ご紹介した会社のように、新規取引のたびにありとあらゆる側面から工場監査を受けることになります。

HACCPにきちんと対応していることを、自力で証明しなければなりません。

民間認証の取得は、その時間・手間をお金で買うということです。

 

ちなみに、JFS規格の場合、監査員はISO等と異なり、指摘だけでなくコンサルティングも可能なのです。
現段階のレベルが低い会社でも、半年ほどで認証までたどり着くだろうとのお話でした。

 

そして、一番気になるのは導入コストですよね?

 

 

件の社長も、そこはしっかり確認を取られていました。
この会社は加工工程が少ない乾物系を扱っている小規模工場のため、おそらく最低ランクで賄えるという見立てで、
コンサルティングから認証取得、登録まで入れてザックリ40万円ほどという回答。

 

ISO等とは一桁違うのも、小規模事業者には嬉しいところ。

身構えていた社長も肩透かしを食らっていました^^

 

何より、
「これをきっかけに社員の意識改革をしたい」とおっしゃる社長が頼もしく、
同行して本当に良かったと嬉しくなりました。

ゾーニングや設備などのハード面よりも、
ルール作りや教育などのソフト面の方が難しいのです。

 

それでも時間もお金もかけて、

目指すべき方向に向かっていくために、教育に取り組む。

 

マネジメントシステムの導入ですから、
きちんと運営できるようになれば、食品の安全管理レベルの向上だけでなく、
現場の継続的な改善も可能になるのです。

 

私も精一杯できることをお手伝いさせていただきます。

 

 

まとめ

 

・JFS規格は、日本発の新しい食品安全管理のマネジメントシステムで、他の規格に比べて導入コストが安いのも魅力

 

・今国会で食品衛生法が改正されると、HACCPが義務化され、ある程度の規模の工場は7原則12手順の完全実施が求められる「基準A」に入る。

 

・JFS-B規格はHACCPを完全にカバーしており、認証を取得していれば「基準A」をクリアできる。

 

 

 

 

 

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