こんにちは。中田麻奈美です。
日米間のTAG(物品貿易協定)はFTAとは違うんだとか、
とりあえず自動車関税は据え置きだとか、
あわただしい動きの中で、株価も急上昇している模様ですね。
クルマはどんな不正をしても、絶対に守られるのか
自動車産業は日本の要、裾野も広くて絶対に譲れないのは理解できますが、
そんな親方日の丸のヨイショぶりが、
完成車メーカーの緩みを生んだのかと悲しくなります。
もはや、どこがどんな不正をしていたのか、
時系列で暗記できる限界を超えるくらい不正ドミノが続いています。
9月26日に、日産が新たな不適切検査の結果を公表、
同日にスズキも排ガス測定結果の改ざんが判明しています。
9月29日の日経新聞朝刊一面には、「スバル、ブレーキ検査も不正」の見出しが躍りました。
アウディも無効なデータを有効としていたようです。
分かっているだけで、これほどの不正。
これが中小企業なら、とっくに吹き飛んでいますよね…
中小企業診断士2次試験の事例Ⅲでもよく題材になる下請け部品メーカーですが、
完成車メーカーは下請けに尋常ならざる厳しい要求を突きつけながら、
自分たちは悠々と消費者を欺き、上澄みをすすっていたのでしょうか。
「現場の声が届かなかった」
「現場は疲弊していた」
「人員不足、設備投資不足だった」
「規範意識の鈍麻」
「コスト管理と品質意識の優先順位が正しく判断されていなかった」
「でもそれは、ゴーン会長のせいではない」
どこまでも忖度する日本社会、素敵すぎます。
なぜ規範意識は鈍麻し、優先順位が正しく判断されなかったのか
ビックリした発言の一つに、
スバルの中村社長の「(三度目の不正発覚になった)今回初めて経営陣の認識が不十分と指摘を受けた。重く受け止めている。」というくだりがあります。
おっと、今までは現場の責任と思っていましたか!?
どういう真意でのご発言かは分かりかねますが、
これまで「現場の奴らは何やってんだ」という意識だったのかと驚かされます。
この他責の風土のもと、規範意識は鈍麻し、優先順位の判断は狂っていったのでしょう。
「現場のこと、何も知らないくせに」
私はこんな大企業に勤めたことも訪問したこともありませんから、
社長と現場の距離感は分かりません。
しかし、足しげく現場に通う暇はないだろうことは想像できます。
ここからは私自身の経験談になりますが、
社員200名規模の会社の社長であっても、
本社工場にすら月1回も足を運ぶことはなかったからです。
同じ敷地内、同じ建物内であっても、社長にとって工場は遠いところ。
それでいて、時折突拍子もない要求を突きつけるので、
「現場のこと、何も知らないくせに」という怒りを買うことになります。
今回のクルマの不正の原因の一つに、
「納期に間に合わない」という心配があったことも明らかになっています。
メーカーは営業が強いですよね。
営業は無理な納期の仕事も受けてきて工場をどやしつけ、
残業や休日出勤も当然だと言わんばかり。
「俺が汗かくわけじゃないし」と、どこ吹く風です。
2代目社長は、古参の営業部長には頭が上がらない。
そして坊ちゃんだから3Kの現場には近づかない。
そんな認識が、誰が言うでもなく現場には広がっていたように思います。
営業が悪いとか、工場がかわいそうとか、そんな話ではありません。
社長は誰よりも現場を知るために工場に入り浸れと言いたいわけでもありません。
「現場のことを分かる」というのは、社員との関係性の構築のためです。
工場長に任せているからと放っておくだけでは信頼関係は作れないでしょう。
互いの心が離れ、一枚岩になれない会社は、
必ずどこかにほころびを抱えることになり、
それが隠し切れない大きな問題に発展することもあるのです。
どこかの大企業では、現場との距離を縮めることは難しいでしょう。
多数のピラミッド階層の、覚えきれないほど多くの役職者に、伝言ゲームで理念やビジョンを伝えなければなりません。
「再発防止策を徹底する」ためには、トップの意気込みを末端まで浸透させる必要があります。
役職者全員が、自分の直下の部下全員に、同じビジョンを魅せることができて初めて、
組織の隅々まで価値観を共有することができるのです。
そんなことは、生半可な研修程度では不可能に思えます。
全員が一枚岩であれば、多少ものの言い方は違っても、
同じビジョンを共有することができるでしょう。
そしてそれができるのは、小回りが利く中小企業ならではだと思うのです。
社員200名なら、全員の顔と名前が一致する距離感です。
直接語り掛けることが可能なのです。
まとめ
・一連の自動車メーカーの不正で、「再発防止策の徹底」するには、価値観を現場の隅々まで浸透させる必要がある。
・中小企業ではダイレクトに社長から価値観を浸透させられる。
・日ごろから工場に足を運んで、社員と関係性を構築しよう