経営理念が浸透しないことは、経営のリスクになる

私が所属する中小企業家同友会では、経営指針作りをまじめにやります。
脳みそに汗かいて、周りの経営者の先輩に時に厳しく突っ込まれながら、
外部環境や内部環境の分析、理念、ビジョン、実現のための数値化まで。

なんと9時~17時×5日!
途中1泊2日の合宿まで含みます。

…そこまでするの??
そんな暇があったら1件でも営業行ったほうがいい。

そう思われた方も多いのではないでしょうか。

 

経営理念は掛け軸のように飾っておくもの?

あなたはご自身の会社の経営理念を言えますか?

もしかしたら先代がそれらしきものは作ってあるが、
暗唱できないという方もいらっしゃるかもしれません。
社是とかミッションとか、いろいろな言い方があるでしょう。

私は、呼び名は何でもいいと思っています。
大切なのは、それが本心として信念となっていることです。

経営者たるもの、信念がない人はいないと思います。
そのホンネの信念が経営理念として明文化されているかどうかがまず問題です。
先代とは違う思いがあるなら、理念を再編集したっていいんです。
ご自身が心からコミットできる文言でなければ、理念が機能しないからです。

理念の機能は、トップから現場の隅々までが行う、日々の無数の意思決定の判断基準となることです。
道しるべです。

単に耳障りの良いきれいごととして掛け軸のように飾っておくだけならば、
経営理念が日々の仕事の判断基準として機能することはないでしょう。

 

理念が浸透しない経営上のリスク

冒頭でご紹介した経営指針は、経営理念・経営方針・経営計画から成ります。
作るだけでも丸5日かけるのです。
事前に「わが社の未来を考える会」という勉強会も別途開催しているんです。

私の前職の会社は同友会には入っていませんでしたが、
後継者が東京の経営塾まで1年間通って経営理念を作り上げました。

しかしです。

それが従業員に浸透するまでには、数年を要しました。
最初にバーンと発表してから2年間は完全スルーです。
私が理念浸透委員会を立ち上げて活動を始めてからも、
9割以上の方が腹落ちするまで3年かかりました。

皆様おっしゃいます。
「理念は作ったが、従業員に浸透させるのが難しい」と。
浸透させなければ、すべては絵に描いた餅です。

 

いえ、本当は浸透しているんです。
会社全体に漂う空気、暗黙の了解こそが、浸透している本当の理念です。
皆が持っている共通認識、わが社の判断基準こそが理念そのものだからです。

 

シェアハウス問題を起こしたスルガ銀行は900億円の赤字転落です。
旧経営陣は損害賠償を請求されるようです。

「これで最後」と言いつつ、調査報告書提出後も不正が続いていたスバルは、
一連の不正によるリコールが約53万台、320億円の損失です。

ダンパー不正のKYBは100億円の赤字転落です。
今後さらに改修費や補償がかさんで、赤字幅は拡大する見込みです。

 

中小企業から見ると、震え上がるような金額の損失です。一発アウトです。
こんなことになっても潰れないのはさすが大企業ですね。

どこの会社も、素晴らしい経営理念がありました。
ここではイチイチ書かないことにしましょう。むなしくなるだけです。
この理念が本当に浸透していれば、このような不正は起こりうるはずがない。
浸透していたのは、別のホンネの理念、ポリシーだったのでしょう。
本来の経営理念が浸透していないことは、経営上のリスクになるのです。

 

理念を作って終わりではなく、真に腹落ちさせることが肝要

 

作るだけでも大変な経営理念、経営指針ですが、
作っただけでは絵に描いた餅です。

理念を従業員に浸透させることは、理念を作るより圧倒的に大変です。
なぜなら、すでにホンネの経営理念が浸透しきっているから。
それが組織文化とか企業風土と呼ばれるものです。

 

誰だっていきなり不正をしたい人はいないと思います。
「現場の倫理意識が著しく欠如していた」
「現場と経営陣のコミュニケーション不足」

そんなふうに語られていますが、本当でしょうか。
現場はコミュニケーション不足だと自然と不正をはたらくでしょうか。
倫理意識が欠如する背景は何だったのでしょうか。

「検査で不合格になると、全体の作業が遅れて迷惑がかかる」
「顧客からの納期やコストの要求が厳しかった」

現場からはそんな声が挙がっています。

そんな時の判断基準が経営理念です。

以前にも書きました。
最初は小さな、ささいな何かかもしれない。
しかし小さな判断の誤りがやがて大きなコトを起こすのだと。
「言語化できないことは、共有できない」はコチラ

まさか、その後こんなにどんどん行政や大企業の不正問題が噴出するとは思ってもいなかったのが本音です。
悲しいことです。

経営理念なんて浸透するわけがない、そんなきれいごとで飯は食えない。
そう思っていらっしゃるなら、それが御社のホンネの経営理念。
絶対に掲げている文言の理念が浸透することはありません。

しかし大切なことは、立派な理念をひねり出すことではなく、
社長を含む社員全員に、それをホンネの信念として腹落ちさせることなのです。

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