節税より利益確保、自前主義より外注活用がおススメ

信州に暮らしていると、農業がとっても身近ですよね。
住宅街の中にも、田んぼや畑、ブドウやリンゴなどの果樹園が広がります。
サラリーマン家庭に育ち、農学部卒なのに農業をやったことない私には、
農地を持っていて農業をやれる農家さんは、あこがれの職業の一つです。

先日、信州農業MBA研修のサポートに行ってきました。
「経営力を高める財務管理」ということで、
大阪の農業経営コンサル兼税理士の渡辺喜代司さんの講演を、受講生の皆さんと一緒に聴講しました。
すっごく面白くてパワフルな講演でしたので、シェアしますね。

 

日本の節税は「費用の先取り」か「利益の先送り」しかない

 

のっけから、「僕、『税理士』って言いたくないんです。何でか分かります?みんな『節税』って言ってくるから。」と強烈な自己紹介。

「ほんで、節税って言うてくるとこに限って、大抵税金払ってません。
利益出てないから。それやのに何が節税やねん、稼げや!
稼いでから税金の心配しろ、順番が逆やと言うてやります。」

愉快痛快、歯に衣着せぬ物言いで講演は進みます。

「日本の節税は、今のところ『費用の先取り』『利益の先送り』しかない。
それで利益を減らすしかない。
何で僕がお客さんの利益を減らさなあかんの?という話」

本当にもう、受講生よりも面白がってクスクス笑いながら聴講してました。

渡辺さんのポリシーは、「根本的な解決を大切にしている」ことです。
借金は悪ではない、返せなくなることが悪。
事業を大きくするために、利益を借りてくる(借金)のは必要なこと。

だけど、それは根本的な解決ではない。
目的はお金を上手に使って利益を出すこと!

なぜなら、経営発展の根幹は、
①お金があること
②お金が増えること

だからです。

すごく明快で分かりやすいですね。

ちなみに。
行政の担当者は、「よくしゃべるなあ…」と半分呆れ顔でした。
私はけっこう好きですが、こういう「まくしたて系」のセミナーは、
行政の担当者には評判がよくありません。。
前にも、スライドの半分近く残して終わってしまった熱いセミナーがありましたが、
受講生は前のめりだったのに、行政の担当者は「時間内にきちんと最後までやって欲しかった…」とぼやいてましたね^^;

セミナーもコミュニケーションだと考えると、
時間内に質疑応答までキッチリ終わるけど眠たくなるようなセミナーよりも、
最後まで終わらないけど、明日から受講生が動き出せるセミナーのほうが、
私としては価値があるように思います。

もちろん、時間内に終わり、「伝わる」セミナーが最も良いですが。

 

利益は1個当たりの儲けだけでは決まらない


さて、本題に戻って「利益」とは何でしょう。

あらためて考えてみると答えにくいでしょうか。

売上から原価、販管費を引いて残ったものが営業利益。
決算書ではその順番で書いてありますよね。

食べ物なら、原材料費や加工賃、包材等が原価です。
人件費、運賃、水道光熱費、家賃、広告費、モロモロが販管費です。

単価から1個当たりの原価や経費を差し引いた「1個当たりの儲け」に、
販売量をかけると利益を算出できますね。

大切なのは、この「販売量」は単価の設定によって変わるということです。
単純な話、うんと高くすれば売れないし、安ければ売りやすい。
同じものなら、より良いものをより安く売るのが商売人の腕の見せ所。

1個1万円のメロンは、一袋398円のみかんのようにバンバン売れません。

いま流行りの6次化もそうですが、すべてを自分でやると高くなります。
信州産だから、手作りだから、無添加だから、付加価値が高いから、
高くても売れる?

「おしゃれな小さいビンに入れてジャム800円で売ってもダメ」

全く同じことを思います。
量産のメーカーだって、こだわりの原材料でプロのレシピで、
素材を活かす機械や製法を日々研究して作っています。

圧倒的な原料調達力で、一流の原料を安く仕入れてきて、
さらにそれを自社で選別して品質にも味にもこだわり、
優秀な人材を集めて開発・製造します。
今できる最上級のものを1分に100個も200個も作ります。
もちろん、厳しい衛生基準もクリアしています。

捨てるのがもったいないから、と規格外を使うのではなく、
厳しい原料規格基準を設けて、合格した原料しか使いません。

それが100円や200円で売っているんです。
全国どこでも手に入る利便性も備えて。
そんな商品と戦えるでしょうか。

そしてスピード。
6次化のセミナー等を聞いていても同じことを思うのですが、
借金して加工場を建てて自分で加工食品を製造するのは、
ハイリスクなうえにスピードでも勝てません。
もちろんコスト面でも。

餅は餅屋、ノウハウを持つメーカーに委託するほうが確実です。
ロットの問題はありますが、小ロットに対応するメーカーもあります。
そこでうまくいったら、次のステップとして内製化を検討すればいい。

広告宣伝も同じく、お金をかけないでSNSで…という話は山ほどありますが、
じゃあ本当に誰でもSNSで集客できるの?
お金をかけないなら、手間をかけなければならない。
それだけの時間を捻出できるの?
スキルを身につける「ずく」はあるの?

※「ずく」は、信州ことばで「根性」

結局は、ニガテな部分は外注して時間をお金で買い、
本業に集中したほうが結果が出て利益も残せる
のだと思います。

人材育成も同じで、最終的な内製化を目指すなら尚更、
高い人件費をかけて何年も試行錯誤するより、
外部の力を借りて仕組み化したほうが安いし速いでしょう。

これからの時代、何でも自前主義で…というビジネスモデルは厳しいでしょう。
協業、共創は個人レベルではなく、企業レベルでも必要なことだと思います。
外注コストを嫌う気持ちは分かりますが、
速く、安く、確実に、高品質で安心安全なものが仕上がる可能性のほうが高いです。

利益幅は薄くても、たくさん売れればいいのだ!

 

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