私は農学部出身です。
微生物を活かした環境保護に興味があって農学部を選びました。
そんなご縁から、(一社)長野県経営支援機構が県から受託している、
信州農業MBA研修でもアシスタント務めさせていただいております。
先日は、マーケティングの第一人者でいらっしゃる
静岡県立大学の岩崎邦彦先生をお招きして、
「農業を強くするマーケティング」というタイトルでご講演を賜りました。
岩崎先生は、中小企業診断士業界ではとくに著名な方です。
私も受験生時代に先生の著書を何冊も買って読んでいました。
今回のセミナーの内容は、著書「農業のマーケティング教科書 食と農のおいしいつなぎ方」に沿って進められましたが、
あらためて新しい発見がありました。
原因と結果を履き違えない
マーケティングの講義なので、顧客目線、顧客視点の大切さについて、
とくに繰り返し事例を交えて角度を変えながら説明がありましたが、
セミナーの最後に「原因と結果が逆なのではないか」という話があり、
それが本当にそうだなあと目から鱗の発見だったのでシェアしますね。
いま、メディアなどでも農業の深刻さについてはしょっちゅう報道されていますよね。
「少子高齢化で人口減少、胃袋が小さくなっているから、業績不振だ」
「若者の●●離れで市場が縮小しているから、業績不振だ」
「後継者がいなくて廃れているから、業績不振だ」
だいたいそんな論調が多いですが、岩崎先生は「原因と結果を逆に見ていないか」と問題提起されました。
つまり、消費者の急須離れで茶葉が売れないんじゃなくて、
急須でお茶を淹れる楽しさを伝えていないから、結果的にお客様が離れたんじゃないの?という話。
(静岡らしいたとえ話ですよね^^)
その証拠に、コーヒーミルはいまだにスーパーでも売っている。
近くのニトリがオープンした時は、コーヒーミルが売り切れていた。
豆を挽くところから始めるなんて急須以上にめっちゃ面倒くさいのに。
つまり、コーヒーは淹れるプロセスをコトとして売っている。
一方、茶葉は?
後継者不足だから農業が衰退するという。
そうじゃなくて、衰退産業だから農業を継ぎたくないのでは?
外部環境のせいにしているかぎり、未来はないのだと。
外部環境が変わったことを嘆いている暇があったら、
お客様に合わせて自分が変わればいいと。
同じことは、経営理念の浸透や、ビジョンの共有にも言えると思います。
社員が●●だから経営理念が浸透しない、
現場が××だからビジョンが共有できない、
それは本当だろうか?と疑ってみましょう。
理念が浸透しないのは社員がその気にならないからではなく、
その気になるような理念の伝え方ができていないのでは?
理念の必要性や役割を実感できるエピソードもないからでは?
共有する仕組みがないから社員を巻き込めないのでは?
理念を唱えるトップ自らが、理念に本気じゃないのでは?
社員に経営者目線を要求する前に、社長が社員目線になりきってみよう
よく、「社員も経営者目線になってほしい」といいますが、
では経営者は、社員目線、パート目線に本当になりきれているでしょうか?
農業マーケティングのセミナーでは、生産者目線から消費者目線に切り替えるワークもやりましたが、受講生の誰もできませんでした。
トマト+●●=満足
この●●に、生産者は「おいしさ」「品質」などを入れてしまいます。
ところが消費者に同じ質問をすると、「チーズ」「オリーブオイル」「塩」です。
生産者は野菜としてのトマトが見えていて、
消費者にはメニューとしてのトマトが見えている。
それほどまでに、どっぷり浸かった視点を切り替えるのは難しいのです。
仕事+●●=満足
会社+●●=成長
理念+●●=判断基準
ビジョン+●●=考動
どうすれば現場で理念が判断のモノサシとして機能し、
ビジョン実現に向かって自ら考え行動できるようになるのか、
社員目線で発想を切り替えて、考えてみてはいかがでしょうか。