先日、長野同友会松本支部の例会がありました。
今月は(株)ロイヤルオートサービスの中田社長をお迎えして、
『社員が主役になれる会社作り~2代目としての理念と“現場”のギャップに挑み続けた18年~』というテーマでご報告いただきました。
業績向上を支えたトップダウンで生まれた指示待ち社員という弊害
(株)ロイヤルオートサービス様は、車検のコバック、板金のモドーリーのFC加盟店を手掛けておられ、
よく車をぶつけるワタクシも常連客でございます^^;
中田社長は2代目として2001年に異業種から入社し、
当時の社長(現会長)の強いトップダウンによる統制が届かなくなってきた店を任されました。
当時は会社のガンと表現されていた、指示を守らない店だったそうです。
いい意味の指示ゼロではなく、まさしく『支持ゼロ』のほうだったのでしょうか。
5店舗に拡大していたものの、組織図もガバナンスもない状況で、
最初にISO9001の認証取得に挑戦され、
組織図づくり、ルール作り、記録作成に取り組んでこられました。
その後もどんどん店舗数が増え、徐々に社長が全社を把握できなくなり、
当時専務であった中田さんが全店舗の運営にあたるという強烈なトップダウンで会社を支えてきました。
急拡大、急成長期に組織にひずみが出るのはよくある話です。
16店舗の運営を一手に担い、
未使用車の販売という新しい業態にも乗り出してやることはいっぱい、
でも事業が優先で管理は後回し…
と言いつつ逆に管理に時間も意識も取られてしまう…
人も急に増えてスキル・マインドにバラツキがある…
経営とスタッフに乖離が出てきて、組織マネジメントが大変なことに…
短中期の優先順位がつけられず、事業計画の進捗があやうい…
そんな感じだったのかなと勝手に推察します。
強烈なトップダウンで業績急拡大したものの、
その弊害として自主性が消え指示待ち社員を育ててしまったそうです。
案の定、辞める人も多くなり、慌てて権限移譲を試みたものの、
今度は急激なマネジメントの変更に幹部がついてこれず、
やはりトップダウンに戻る…という苦しい時代が続きました。
これからの時代に指示ゼロ経営が必要な理由
決定的だったのは消費税増税だったといいます。
需要の拡大に合わせて店舗も採用も拡大してきたし、
自分ひとりで全店舗を運営できていた。
しかし、需要が縮小していく中で何をすべきか?
自分ひとりで全店舗を飛び回り、
もぐら叩きのように場当たり的な問題対応を続けるのは限界がある。
正解のない時代に各店舗に合わせた施策を考え実行するには、
組織が自主性をもって自律的に動く必要があることに気づかれたのです。
これはまさに、指示ゼロの考え方です。
最初の1人は、役員の中にいるとは限らない
乖離してしまったスタッフとは意思疎通が難しくなり、
様々な戦略や施策の意味も伝わらず、雰囲気は悪化していきました。
そこでまず役員・部長から分かるようになってほしいという想いで、
外部の支援も得ながら財務面の教育も行いました。
しかし、店長クラスには理由や背景を説明していなかったため、
「は?そんなことに金使うなら給料上げてくれ」といった反応が返ってきて、
毎月のように退職者が出たといいます。
これまで強烈なトップダウンで会社を仕切っていたのですから、
社長から「会社をどういう風にしていきたい?」と訊かれても、
シーンとしていたのも当然と言えます。
しまいには「指示ください」となってしまう。
そして、「社長の言葉を直接スタッフに届けてほしい」と言われたそうです。
(それは幹部の仕事でしょ…)と思いながらも、
定休日に月例の全社ミーティングをもつようにしました。
初回は丸一日かけて社長の考え方を説明し、
2回目は丸一日かけて質疑応答…と回数を重ねるうちに、
最初は冷ややかで無反応だった社員たちの中から、
少しずつ動きがみられるようになってきたといいます。
これがイノベーターの動きです。
今は店長の20%くらいは分かってきているものの、
まだぴんと来ていない店長もいる。
だけど、入社間もないスタッフが、「店長は変わってきました」と言う。
「でもまだまだですけどね。」とも。
つまりこの場合、店長よりもスタッフのほうが早く真意を理解できているということですね。
最初に動き出す人、最初の1人が役員クラスにいるとは限りません。
私が『全員化』つまり最初から全員に伝えることをお勧めする理由もまさにここにあります。
結局最終的には、現場の隅々までビジョンを共有したいのですから、
最初から丁寧に趣旨説明をしたほうがいいと思います。
そこから始めて業績向上につながっていくんだと思います。
「は?そんなことより給料上げて」とならないために、
背景や理由の説明は絶対に必要ですね。
お伝えしたいことは山ほどありますが、
今日のところはここまで。
※「指示ゼロ経営」は米澤晋也さんが提唱している経営手法です。
当研究所は米澤さんの許可を得て記載しています。