子どもたちから学ぶ組織の自律的な動き

自律型組織って言葉は聞いたことはあると思いますが、
実際に経験したことがなければ、分かるような分からないような言葉だと思います。

自分で立つ自立ではなく、自分たちをコントロールする自律。
それは、ヒトの集団に備わっている本能なんだと思います。
私はそのことを、13歳の子どもたちから学びました。

 

指示しなくても動き、助け合い、学び合い、関わり合う

 

先日、ある中学校で夢新聞作りのワークショップを開催しました。
まだ入学して3週間の、人間関係ができる前の集団です。
1人1人の夢新聞を書くだけでなく、「クラス全員が制限時間内に夢新聞を完成させる」というミッションを与えます。
そして、ワーク中は講師も担任も、何を聞かれても答えない約束です。
その代わり、教科書や辞書を使って調べたり、クラスメイト同士で助け合って、自分たちだけで解決してもらいます。
絵が得意な子に絵を描いてもらってもいいし、文章が上手な子に文章を書いてもらうのもOK.
これからの教育に求められているアクティブラーニングを取り入れたプログラムです。

夢新聞作りがスタートすると、私が担当したクラスの子たちは、
誰が号令をかけるわけでもなく机を動かしてグループを作り始めました。
もちろん講師も担任も何の指示も出していません。
しかも授業でいつも作る班ではなく、ランダムに仲間を作ってグループを作りました。
最初の1人が動き始めてあっという間に、教室は大小さまざまなグループが不規則に並んだ混乱状態に。

友達に誘われても仲間に加わらず、1人で黙々と取り組む子もいます。
ムードメーカー的な子が、どのグループにも入らず、島の真ん中で取り残されている光景もありました。
かといって外されているわけでもなさそうで、周りのグループにちょっかいを出しています。
それぞれに心地よい関わり方、距離感を自然と取っている感じです。
本当に色々な個性の子どもたちです。

結論から言うと、その日は私が担当したクラスを含め、
5クラスとも「クラス全員が制限時間内に夢新聞を完成させる」というミッションは達成できませんでした。
実はミッション達成率は1~2割くらいなんだそうです。

「今、ミッション達成できなかったけど、もう一度チャンスがあるよ」
「制限時間内に、全員が夢発表をしよう。あと〇分チャンスがあるよ」
夢新聞を完成できなかった子も、最後に見出しだけは全員発表してもらいます。

思春期の子供たちにとって、出会って間もないクラスメイトの前で自分の夢を発表するというのは、
心理的に抵抗がある子もいます。
一番恥ずかしいお年頃だから。
「制限時間内に発表してください。順番は誰からでもいいですよ。やり方はお任せします。」
と言っても、普通なかなか手は挙がりません。

 

個ではなく集団になった時に、役割が自然発生する

 

でも、いつも感動するのは、ヒトの集団には必ず「最初の1人」がいること。
必ず、最初の1人が沈黙を破って「じゃあ自分が」と手を挙げてくれます。
あるいは、「発表の順番を決めよう」と口火を切ってくれます。

もしかしたら、別の集団に入れば目立たないタイプの子かもしれません。
実は平均と比べたらそれほど積極的なタイプじゃないかもしれません。
でも、集団になると、必ず役割が自然発生します。
必ず、最初の1人が現れます。
もはやヒトの集団としての本能としか思えません。

最初の一人に続いて、数人がぽつぽつと続きます。
イノベーター理論でいうところの「アーリーアダプター」たちです。
そして数人発表すると、「今のうちに発表しちゃえ!」というモードに入り、
同時に複数人の手が挙がるようになります。
ムーブメントが起こった状態です。

もちろん、最後まで手を挙げない子もいます。
そのクラスは、制限時間が過ぎても4~5人残ってしまいました。
そもそも発表したくない、このまま時間切れになればいいと思っていた子もいるでしょうし、
仲間に遠慮して手を挙げそびれているうちに時間切れになった子もいるでしょう。
イノベーター理論でいうところの「ラガード」ですね。

イノベーター理論を目の前で見ることができるのが、
夢新聞アクティブラーニング版です。

 

ビジョンへの強いコミットと少しの訓練があれば自律型組織になれる

 

このワークの真の目的は、夢新聞の完成そのものではなく、
ミッションを達成できたクラスは「なぜ達成できたのか」
出来なかったクラスは「なぜできなかったのか、どうすれば達成できたか」を考えてもらうことです。
それが自律型組織になるための一番の学びです。

部分最適から全体最適を考えられるような強いビジョンがあれば、
自然と自分にできることを考えて自律的に動くようになる。

今回、学校の授業という短い時間ではありましたが、
子供たちがミッションを達成できなかったのは、
まだまだ魅せ方、動機付けに工夫の余地があるということかもしれません。

私もまだまだ訓練が必要です!
是非、一緒に頑張らせてください!

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