最近、リーダー育成に悩む社長に立て続けにお会いしています。
「ふさわしい人がいない」と外部調達を検討される方もいらっしゃいます。
聞こえてくるのは、「最近の人は頼りない」「欲がない」といった声。
「私たちの時代は貪欲だったけど、今の人は『仕事が増えるのは嫌』という」と。
では、どのようなリーダーが今の時代にふさわしいのでしょうか。
少し前の記事ですが、2019年4月12日付の日経新聞にこんなコラムを見つけました。
『従業員視点の新リーダー像』
記事によれば、ポイントは3つです。
1.新たなリーダー像には部下の支援が不可欠
2.経営に参加し支援する従業員で業績向上
3.日本では上意下達傾向強く浸透に工夫も
もう少し掘り下げてみましょう。
社員の参加や支援を求めるリーダーシップで創造性や専門性を発揮できる
今は、変化が速く、ニーズの多様化が進み、予測不能なことが多い時代です。
1人の優秀なリーダーが常に正解を示し続けることは困難です。
だから、指示ゼロの自律型組織が注目されているのだと思います。
記事では、参加型・支援型のリーダーが求められる要因を3つ挙げていました。
①チームでの業務が増えた。
だから、チーム全体として業績を上げる仕組みが必要になってきた。
②ヒエラルキーではなく、プロジェクト組織での仕事が増えた。
だから、プロジェクトに関わる社員たちの関与がより重要になってきた。
③専門能力の高い社員を活用する知識生産型の仕事が増えた。
だから、メンバーが創造性や専門性を発揮して主体的に取り組むことが必要になってきた。
これってとても指示ゼロ的な考え方だと思います。
そもそもリーダーは、目的達成のために組織やチームをまとめて動かすものですが、
チームが主体的・自律的に動くために、部下の支援を求めるという。
一見逆説的ですが、「助けて」「手伝って」が言える素敵なリーダーだと思います。
「私はこういう店にしたい。でも・・・」
先日、飲食チェーンの店長さん向けの研修を行いました。
自分のお店を指示ゼロで運営していけるようになるための第一歩が、
自分の想いを正直に語るということ。
そして、弱みを素直に認めて、「だから、助けて」と言えるようになることです。
カッコつけてどこかの名言集から言葉を引用する必要はありません。
しどろもどろで、つっかえつっかえでもいいのです。それも個性。
「私はこういう店にしたい。なぜなら、こういう思いや体験があるから。
でも、私はこういうところが弱い。
だから、皆さんの力が必要だし、手伝ってほしい。」
自分の“WHY”に正直な想い、言葉が人の心を打ち、人の行動を変えるのだと思います。
全員が全く同一のビジョンを持たなくても結束できる
くだんの飲食チェーンの研修では、社長の想いも何度か語ってもらっています。
そこには「目指せ100店舗」といった具体的な数字目標も出てきます。
しかし、その想いを受け止めた店長さん達1人1人は、
必ずしも全く同じ姿をビジョンとして持っていませんでした。
「こういう店にしたい」というのは、会社としてのビジョンから派生した1店舗ごとのビジョンだと思います。
1つ1つのお店が、それぞれのビジョンを実現することで会社のビジョンも実現していく。
逆に言うと、スタッフ1人1人や、お客様が幸せになっていくことで、1つのお店のビジョンが実現する。
そういう形を自然と作れていくと思います。
けっして、バラバラなビジョンに向かってバラバラに走っていくわけではありません。
「自分事」に落とすとき、そこには自分が想像できる実在の人や過去の思い出しか出てこないでしょう。
理念やビジョンに出てくる抽象的なキーワードに対して1人1人が違う絵を描いたとしても、
それぞれのイメージの集合体を持つことで想いを共有し、結束することができるのです。