新築した家に引っ越したばかりの、
0歳と2歳の子がいる育児休業明けの男性社員に、
育休明け2日後に転勤の内示があり、1~2か月の延期を求めるも却下され、
退職日も会社に決められて有休消化も認められなかったことがSNSに投稿された今回の騒動。
本当に、いったい何がきっかけでどうなるか分からない時代になりました。
たくさんの社員を抱える大企業ほど、明日炎上するかもしれない恐怖があるかもしれません。
私は当事者ではないので、Twitterの投稿がどこまで真実なのか知る由もないし、
会社側がどういう事情で転勤させる必要があったのかも分かりません。
ただ今後ますますリスクマネジメントの重要性が増したなと思うばかりです。
社内メールの流出でバレた内外の矛盾
会社は一方的に悪者のように炎上していますが、色々な事情があったのかもしれません。
ただ、これほどこじらせたことにも何らかの原因があったはずです。
「当社の社員と確定していないのでコメントは差し控えます大作戦」をとりながら、
すでに社内メールの流出で“当社の社員”だと認めているのも苦しい。
流出したメールの中で、「社員は最も重要なステークホルダー」と言っていますが、
この騒動では世間的に理解され難いでしょう。
“あるべき姿および大切にしたい価値観”とのズレ
では即転勤企業はどんな理念を掲げていたのでしょうか。
#カガクでネガイをカナエル会社 というキャッチコピーは図らずも浸透してしまいましたが、
実際の理念体系はとてもしっかりしている会社です。
ここに書ききれないので一部抜粋しますが、まず「目指す企業像」も素晴らしい。
あるべき姿および大切にしたい価値観として書かれています。
価値をつなぐ
○○グループとしての一体感を大切にし、お互いに協力し、ともに価値創造と事業展開に取り組みます。
革新をつなぐ
組織の壁や従来のやり方にとらわれず、社内外の知恵を融合し、絶えず革新に向けてチャレンジしていきます。
人をつなぐ
○○グループの成長の源泉は「人」にあると考え、人の成長を大切にしてイノベーションを実現します。
いかがでしょうか。
一体感を大切にしてお互いに協力するならば、一体感を醸成できるような働きかけをする必要があるかと思います。
従来のやり方にとらわれないならば、男性の育休取得という新しい流れにも社内外の知恵を融合してチャレンジすればいい。
本当に会社成長の源泉が「人」ならば、話し合いの余地なしと受け取られるような対応はしないはず。
目指す企業像を本当に目指していたのかな…と考えさせられます。
これは私が理念マニアだからではなく、Twitterでも触れられています。
1人の社員のネガイもカナエナイ会社だと揶揄されたり、
株価暴落や内々定辞退という実害にもつながっています。
さらに、企業理念を実現するための1人1人の行動指針として、ESG憲章も掲げられていました。
こちらも一部を抜粋しますが、唸らされることばかりです。
・株主をはじめとするすべてのステークホルダーとのコミュニケーションを重視し、適切な情報開示を行います。
・すべての社員の人格や個性を尊重して、全員が健康で働きがいを感じ、能力を最大限発揮できる企業風土を作ります。
・安全を経営の最重要課題と位置づけ、健全かつ安全な職場環境づくり、製品の安全性確保、地球環境の保護に取り組みます。
最も重要なステークホルダーと定義づける社員とのコミュニケーションが不十分だったのでは?
既に自社の社員と確認できているにもかかわらず、
対外的には公のコメントを出さないという姿勢は果たして「適切な情報開示」と言えるのか?
すべての社員の人格や個性を尊重するなら、家庭事情への配慮はなくていいのか?
転勤を命じる時に、この憲章に立ち返ってみたか?
本人が働きがいを感じるだろうと本気で思ったのか?
安全な職場環境とは、物理的肉体的な安全だけなのか?
安心して働けるという心理的安全性については考慮しないのか?
他にも「共創」や「持続可能型社会」といった気になるキーワードが満載です。
色々な思いがぐるぐるします。
「理念では飯が食えない」なら、できないことは掲げるな
繰り返しますが、今回の騒動については当事者ではないのでコトの顛末、真実は分かりません。
単なる事例ですが、掲げた理念と実際の行動に矛盾がないか考えていただきたいのです。
こういうと「そうはいっても理念で飯は食えない」という話になりがちです。
でも、だったらそもそも「できないことは掲げるな」と言いたい。
こんな時代だからこそ、まっとうな理念とまっとうな行動が伴わない会社は生き残れないと思うのです。
プラスチックごみ問題に対しても、優れた素材を開発していただけに残念です。