実はこのところ、ある業界団体向けの手引書の執筆に追われています。
もともとの専門分野の斜め上くらいのところで、
法改正や、まだ未確定の政省令に対応しつつの執筆なので、とにかく調べものが多くて苦しいです。
ある法律や制度を作るには、本当にたくさんの人が膨大な作業をしていることがよく分かります。
投資なきリターンはない
様々なガイドラインや政令案を片手に、各種検討会の検討結果やパブコメと突き合わせながら確認を進めているのですが、
パブコメの中には「○○は大変だから、行政が無償で支援してほしい」といったコメントも散見されます。
うん。無償。
たしかに、自分たちの望まざるところで法改正が行われ、
新たな対策の必要性が生じるにあたって、費用負担など一切したくないのは当然だと思います。
一方で、これを逆にチャンスと捉えて、いち早く対応することでのし上がろうという前向きな企業様もあります。
法改正が行われるということは、世の中でその必要性が高まったからであり、
必要性(ニーズ)があるなら一番に対応しようという姿勢です。
法改正対応のための施策を提供する側の企業様にとっては、大きなチャンス到来ですから、
法改正が検討されている段階から、新サービスを打ち出します。
法改正をチャンスと捉える企業様は、まだ法律がどうなるか分からない段階から、
真っ先にそういった新サービスにお金を払って対応していきます。
もちろん、法規制の内容が確定する前に投資するのは、無駄になる可能性もあり、
経営者としては慎重な判断が求められますし、
便乗商法に乗せられて騙されるなんてのは論外です。
が、ひとつ言えるのは、「投資なきリターンはない」ということだと思います。
もしかしたら法規制を超えた過剰対応になっているかもしれないけれど、
そこまで投資して先に取り組んでいる人に、
「みんながどうするか様子を見てから…」という人が勝てる気がしません。
その投資が多少無駄になったとしても、企業として致命的なものでなければ、
取り組んだこと自体が学びであり、経験値になるからです。
社員に投資する会社、社員から搾取する会社
「無料でやってほしい」
「無償でお願いしたい」
行政の無償サービスは、つまり税金投入です。
たいてい安価な謝金での業務委託ということが多いです。
(もちろん、大型案件ではビックリするような予算がついているものもありますが)
安価な謝金では、数をこなさないと食っていけません。
いきおい、一つ一つに深い対応することは難しくなります。
私自身も公的機関のサービスを受託していますが、
実務代行はできないため、「あとは自力で頑張れ」ということにならざるを得ません。
けして品質が悪いとか、いいかげんに対応しているということではなく、
公的機関の公益性の観点から、支援できる範囲に制限があるということです。
最近、「無料だから」と安易に指名されるセミナー講師依頼も多くなってきました。
公的機関の仕事になると、セミナーをやっている2時間だけが謝金対象で、
コンテンツ作成の時間はタダ働きということになります。
何度も同じことをしゃべっているセミナーの使い回しならそれもアリですが、
たいてい、かなりのカスタマイズが必要な案件だったりします。
そんなセミナーは搾取に近いです。
内容に期待しすぎてはいけないことがお分かりいただけるでしょうか。
同様に、何かあった時に社員にやらせればタダだと考えている方が多くてビックリします。
たしかに、外注費用は発生しませんが、社員の時間を費やすということは、
そのぶん他の仕事が遅れたり出来なかったりするわけですから、
見えないコストがもっとかかっていることを忘れてはいけません。
その仕事が、苦しくても社員に担ってもらうことで人材育成につながることならいいと思います。
(私の場合はまさにこれで、安価でも勉強になるから喜んで引き受けてきました)
しかし、明らかに仕事のコアではなく、アウトソースすべきことまでケチると、
社員のモチベーションも下がり、逆にコストアップにもなる可能性大です。
社員への投資とは、直接的な研修等だけではありません。
成長につながらない業務を切り離して外注することも、立派な社員への投資です。
逆に、「餅は餅屋」でアウトソースしたほうがいいことも社員に押し付けることは、社員からの搾取だと思うのです。
あなたは、どちらのタイプでしょうか。