前回、「これは私の仕事ではありません」というスタッフについて書きました。
そもそも、判断材料である情報の共有ができていますか?
理由や背景をちゃんと説明していますか?
ということをあらためて問わせていただきました。
この問題を、別な角度から考えてみましょう。
たとえば、私たち中小企業診断士は、互いに仕事を紹介しあうことはよくあります。
税理士や弁護士の方と連携して業務にあたることもよくあります。
もちろん、業務独占(該当する資格を保有してないとやってはいけない仕事)がある税理士や弁護士の領域に、資格を持っていない私たちが入ることはできないという事情もありますが、
得意分野を持ち寄ることで、企業様によりよい支援ができれば一番いいからです。
売上の最大化と費用の最小化だけを考えれば、
自社だけですべてを賄うのが一番のように思えます。
いわゆる「内製化」ですね。
しかし、それが自社にとって一番いいのかどうかは、冷静に見極める必要があります。
「営業マンが持参するより、宅配を頼んだほうが安いの!?」という現実
先日、たまたま「これは経費で落ちません」というドラマを観ました。
私が観た回は、新しく専務に就任した社長の息子がイキっていて、
それまで毎年続けてきたノベルティグッズの費用対効果を疑問視し、中止させるという話でした。
企画を通したい営業部と経理部の主人公たちは、
数字でしか動かない専務を説得するために、削れる経費がないか徹底的にシミュレーションします。
お得意様には営業担当がご挨拶も兼ねて直接グッズをお届けしていたけれど、
宅配にしたほうが実は安い!という事実が発覚して驚愕する場面がありました。
「お届けしている間に営業が他の仕事ができるという機会損失もあります。」という指摘も。
実は、私がご相談を受ける中小・小規模事業者のみなさんにも、
同様の“無駄な努力”はよく見られます。
目に見える外注費用がもったいなく思えて、何でも自社でやろうとするパターンです。
餅は餅屋、プロに任せたほうが安くて速くてクオリティも高いのに。
もしその業務がコアでないのであれば、外注活用も検討です。
本当に、「それは私の仕事ではありません」どころか、
「うちの会社が時間と労力をかけてやる仕事ではありません」という話かもしれないのです。
手数料節約にこだわりすぎて、集客力のあるショッピングサイトに乗らないのも典型的な事例です。
圧倒的な集客効果や決済機能の利便性を考えれば、手数料も必要経費です。
ショッピングサイトが「都心の百貨店」だとしたらタダで出店できるわけないし、
自社サイトは「人通りのない田舎の路面店」みたいなものですよね。
機会損失は数字として見えにくいので、つい外注費用をケチりたくなる気持ちは分かります。
しかし、中小零細だからこそ、ノンコアはできるだけ削ぎ落し、
コア業務に限られた経営資源を集中させることが大切だと思います。
客の来ない、使い勝手の悪い自社サイトで四苦八苦している暇があったら、
ネットショップは外部サービスを活用して手数料を払い、
新商品・サービスの開発や営業に注力するほうが結果的にビジネスは大きくなかもしれません。
「会社は学校じゃないから人材は育成しなくていい」というのは、ある意味で正解
件のドラマの専務は、これまでの経費を洗い直し、「無駄が多すぎる」とバッサリ。
「アウトソーシングに切り替える」と宣言します。
「役に立たない社員3人で3日がかりでやっていた仕事も、プロの手にかかれば1人で半日で済みますから」と。
「しかし、社員の育成も必要では…」と食い下がる部長たちに対し、
「会社は学校ではありませんから」とクールに突き放します。
ひと悶着ありそうな気配でドラマは終わりました。
コノヤロー!と視聴者の神経を逆撫でしそうな展開なのですが、
私は「それもそうだ」と思う部分もありました。
つまり、「育てる」というより、「共に育つ」関係でありたいという願いです。
これは中小企業家同友会の基本理念でもあります。
「人を生かす経営」です。
上司や先輩は、仕事のスキルやノウハウを教えることは多いと思いますが、
逆に部下や後輩から学ぶこともたくさんあるはずです。
とくに今は、若手のほうが知識を持っている分野も多くなっているでしょう。
一方的に「育てる」といった上から目線の関係は、
今後ますますあり得ないのではないでしょうか。
育つ環境を整えて、信じて待つ。
そういう意味では、学校のように教える必要はないといえます。
『学び合い』で組織として強くなるようにもって行くのが、優れたリーダーなんだと思います。