失敗してもいい新規事業すら任せられないなら事業承継はできない

 

不定期に気が向いたときに自由なテーマで書き散らしているこのブログですが、
「最近更新されませんね」とご指摘いただいたり、
「教材として使っています」というありがたいお話を聞くことがあり、
身の引き締まる責任感を感じております。
いつもありがとうございます。

ここ最近、本来やりたかった、「事業承継にからめた新規事業立上げ」をご支援していました。
当研究所は、後継者への代替わりを機に、自律型組織への変革をとおして、
古参からパートさんまで全員が一枚岩になれる組織づくりを使命としています。

 

情報の非対称性が信頼の溝を作る

後継者に新規事業のリーダーを任せながら、
軌道に乗せたところで名実ともに事業承継という計画です。

現社長、後継者のそれぞれの思いをお聞きし、
性格も時代も事業環境も全く違う二人の間で、相当の葛藤があることも感じました。
地域も絡む複雑な新規事業で、色々な説明し難いしがらみや縛りもあるようでした。
大人の事情というやつです。

結局、新規事業立ち上げの経緯からお聞きしてお2人のズレが明確になったのですが、
「なぜ既定路線の話を蒸し返すんだ」と後継者を担当から外し、
私には事業化前提で個別商品の開発支援をしてくれという話に変わりました。

後で分かったことですが、後継者をリーダーにと言いつつ、
ほぼ水面下で全てレールが敷かれており、脱線は許されない状況でした。

情報共有が全く足りていなかったんです。

圧倒的な情報量や知識の差があることを「情報の非対称性」と言いますが、
判断材料である情報をもらえなければ最適な意思決定はできません

社員に経営者目線で考えろと言うなら、決算書も公開しましょうと言っている理由はまさにここにあります。

情報の非対称性が著しい状況では、互いに自分事として考えるような信頼関係は築けないのです。

 

お仕着せの成功体験を積ませても後継者を育成できない

完全に敷かれたレールの上を走るだけのリーダーとはなんでしょうか?

オペレーションを担う主任や係長クラスの育成にはちょうどいいかもしれませんが、
意思決定が仕事である後継者教育でそれをやる意味はありません。

私が訪問したときは、後継者はまだ種明かしをされておらず、
自分なりに色々な角度からブロジェクトを検討し、
その事業に知見のある友人知人を訪ね歩いて意見やアドバイスをもらい、
また承継後の長い先の将来を見据えた事業展開や、
黒転までの道筋を考えておられました。

ヒト、モノ、カネの経営資源は揃った状態からのスタートなので、
完全なゼロ→イチではないものの、
そもそも論から立ち返って産みの苦しみを味わう経験は、後継者教育にはすごくいい話だと私も思っていました。

結局、新規事業は社長の指示100%で、相変わらずなプロダクトアウトの発想で進められることになりました。

ニーズ起点ではなく、完全なる製造者都合です。
早晩赤字を垂れ流すことが目に見えるようです。

思いっきり悩み抜いて自分たちで意思決定しながら進めた事業なら納得もできるでしょう。
改善改善で立て直す意欲も湧くでしょう。

逆に誰かが決めた既定路線を歩かされて失敗しても「ほらね」としか思えないだろうと思います。
色々と事情があって赤字でも問題ない事業らしいのですが、
赤字でもいいなら、なおさら後継者自身に考えさせ、失敗も経験させてよかったのではないかと残念でなりません。

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